【読書メモ】宇宙からの帰還 立花 隆 (著)

   

宇宙体験は人にどんな影響を与えるか?

宇宙飛行士の多くは神の存在を信じるようになる、という話を聞いたことがある。宇宙から地球をみるとそのあまりの美しさに、これが自然に生成されたとはどうしても信じられない、つまり神の創造に違いないと思うらしい。

『宇宙からの帰還』は宇宙飛行士にそのあたり実際どうなのかを詳細にインタビューしたものをまとめたもので、実に興味深く読めた。

全員がそうではないようだが、宇宙から地球を見るとなにかとんでもなく強烈な感動が得られるらしく、それは写真ではけして表現できないものらしい。人によってはそれによって即座に神の存在を確信するということだ。

しかし宇宙まで行かないとそんなこともわからないなんてかなり鈍感な人々だなぁと思う。自分はそんなあたりまえなことは子供の頃“擬態する昆虫の数々”を知ったときから悟りっぱなしだ。あんなもの自然には生まれてこない。

宇宙に行った人のすべてが宗教的になって帰ってくるかというとそうでもなく、金儲けに熱心になる人や、逆にそもそも宗教心に富んでいたのに信仰を失った人もいるようだ。

だがしかし、宇宙体験が人に対して与える影響は間違いなく独特なナニカがあるようで、多くの場合「地球上での国家・民族間の争いはアホらしい」という認識を持つようになるようだ。

また、宇宙に行くと異常に頭が良くなる、または相手の考えていることが分かるようになる、ということを語っている宇宙飛行士もおり、宇宙というのは人間の精神に実に様々な影響を及ぼす空間らしい。(宇宙にいくと頭がおかしくなって帰ってくる、という可能性も無いわけでは無いが。)

この本が出版されてからもう30年以上経っている。その間、さらに多くの宇宙飛行士の経験が生まれていることだろうから、是非このインタビューの続編を書いて欲しいと思うのだが、実現していないところを見ると、以後の宇宙飛行士は宇宙体験をあまり特別な体験とは思わない世代なのかも知れない。

最後に蛇足だが、本書でちょっとだけアポロ13号の事故と奇跡の帰還の話が述べられているのだが、この話が一番驚いた。

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